まず、食カから説明していきます。
たとえば、温室のなかで化学肥料で育てられた野菜は、刈り取って二日くらい経てばしぼんでしまいます。ところが、有機栽培されて、その季節にできる野菜は一週聞くらい放っておいておいても元気です。これが、食品のもつ力、すなわち食カです。
また、みなさんが愛情をこめてつくった料理は冷めてもおいしいのですが、コンビニで売っているお弁当はおいしくないですね。これは、食事のもつカ、これも食力です。食力がない食事や食品を食べていても、健康にはなりません。
それでは、私たちが日頃食べているもののなかで一番食カをなくした、だめなものは何でしょうか? すでにお話しましたが、「白米」 です。
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| ■ 食カのないものを食べると |
食カのないものばかり食べていると、病気にかかりやすくなってしまいます。それは、ガンに代表される、生活習慣病といわれる病気です。食力がないと、身体の細胞に元気がなくなってしまいます。たとえば、自分の皮膚を押してみてください。すぐあざができてなかなか治らない人はいませんか。また、シミやソバカスが多く出る人。こうした人はみな細胞が弱っているのです。白米ばかり食べている人、冷凍食品や化学調味料が入った食カのない食品を食べている人は、細胞に元気がなくなってきます。そうすると、ガンになってしまうのです。
現在の病気は、昔の病気と根本的に違います。昔は、病原菌等による外因的な要因で病気になりましたが、現在は生活習慣病のような内因的要因が主流です。そして、その内因的要因に弱い身体をもった人は、外因的要因にも弱くなります。少し前に騒がれたSARSのようなものにも弱く、自分で生活を直さない限り、病気を治すことはできません。生活を改めることが、最大の予防法であるということに気づいていただきたいものです。
昔の日本にも、食カのない食事をしていた人がいました。それは、江戸時代の大名、公家、江戸の豪商の人たちです。江戸以外では、人々は玄米を食べていました。しかし、江戸には将軍がいるため物資がたくさん集まってきて、そのなかで白米にする職人もでてきたのです。そのために、江戸の人のなかに、白米を食べ、おいしいものをたくさん食べた人もいました。そういう人たちがかかった病気を 「江戸病」といいます。それが現代の生活習慣病ですね。それを昔はぜいたく病といっていました。
玄米を中心にした食事を、毎日、よくかみ、お腹を気分的にいっぱいにして、腹八分目でやめれば健康にすごせます。ところが、現在は栄養的にカロリーオーバーで、いまは腹十二分目に食べていますね。日本人は十二分に食べると病気になるのです。日本人の腹八分目の由来はこういうことです。
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| ■ 昔の人は食力のあるものを食べていた |
それでは、昔の日本人はどのくらい食べていたかという話をしましょう。みなさん方が現在食べている食事の基本カロリーは、1300キロカロリーといわれています。朝食をきちんととり、昼食は定食、夕食はビール付きでおいし
いものを食べると、すぐに2800キロカロリーくらいになります。しかし実際には、日本人が健康に生きるために必要なのは、前述のとおり760キロカロリーなのです。
明治時代に日本に招かれ、東京大学で教鞭をとったエルウィン・フォン・ベルツというドイツ人の医者のエピソードを紹介します。「1876(明治9年)に来日し、1905年までのおよそ300年間、日本に滞在し、東京医学校(現在の東京大学医学部)で医学教育にあたったベルツは、東京から日光まで行ったときのエピソードを記録しています。
現在では考えにくいことですが、1度目は馬で行きました。そのときは途中で馬を6回取り替えて14時間かかったそうです。そして2度目は人力車に乗っていったところ、その車夫は1人で14時間半で行ってしまったそうです。馬よりもすごいということで、彼は実験をはじめました。人力車夫を2人雇って、食事を調べながら、毎日体重80キロの人を乗せて、40キロの道を走らせたということです。
ベルツは日本に栄養学を紹介した人でもありますが、彼らの食事が栄養学の知識からあまりにもかけ離れていたので、自分の栄養知識にしたがって肉などを買い与えました。その結果、人力車夫は3日で疲労が激しく走れなくなり、元の食事に戻してほしいと申し出たそうです。
そこで食事を彼らの普段のものに戻したところ、また元気になって走れるようになったという結果でした。ベルツは日本の食事の持つカに感心し、そのことも書いています。当時の人力車夫が一日に50キロの道を走るのは当たり前だと、ほかにも多くの外国人が書き残しています。
しかし、それにもかかわらず、当時の日本人の指導者はドイツ栄養学を盲目的に受け入れていったのです。」(島田彰夫『伝統食の復権』東洋経済新報社)
みなさんは、うそだと思うことでしょう。しかし、時代劇を見ていると、馬に乗った殿様のあとから槍を持った足軽が走ってついていきますよね。やはり昔の日本人にはそれくらいの体力があったのでしょう。
ベルツは、日本人が欧米人に比べて粗食の国民であることを書き残しています。
すでに明治時代にわかっていたことなのに、現代人はぜいたくな食事をしています。戦中・戦後の食料難に対する反動、そして食品メーカーに踊らされて、おいしいからといって、どんどん食べているのです。これでよいのでしょうか。考え直す時がきているのではないでしょうか。いまから粗食の生活にしますか?一度おいしいものを食べてしまった人には無理なことでしょう。
そのためにみなさんがやっておかなくてはいけないことが、一つだけあります。詳しくはあとでふれますが、ビタミンB17の入った食品を毎日きちんととることです。具体的には、キビ、アワ、ヒエなピの雑穀類、桃の種や梅の種、豆です。世界の長寿国といわれるところでは、こうした食カのある雑穀類を主食で食べています。これを食べておけば、みなさんの身体のなかの細胞は気力が上がり、ものすごく身体が元気になります。
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| ■ 食性とは |
食性というのは、それぞれの食品がもつ性格のことです。大きく分けて、身体をあたためる食品と冷やす食品、そのどちらでもないものがあります。東洋医学では「陰陽」という言葉で表しています。のちほど詳しく解説いたします。
簡単に言っておきますと、いま自分が住んでいるところよりあたたかい地域で、あたたかい時期にできる食品、これは身体を冷やすことになりますから、冷え性の人は食べてはいけません。たとえば、お米を買う場合、冷え性の人は自分の住んでいるところより寒いところでできたお米を選んでください。そうすると身体をあたためることになります。たとえば、東京に住んでいる人は、東京より寒い新潟の魚沼コシヒカリを買うとよいでしょう。
魚沼コシヒカリは誰でも知っている、有名なおいしいお米ですね。なぜおいしいのでしょうか。魚沼は非常に寒い地域です。寒いところでできるお米は、糖度が高く、ねばりが多いのです。このため、おいしく感じるのです。
一方、あたたかい地域でできるお米は糖度が低く、さっぱりした味になっていきます。鹿児島でできるもち米は、うるち米の魚沼コシヒカリと同じくらいの糖度をもっています。同じお米でも地域によってこうした違いがでてきます。
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| ■ 身土不二が基本 |
最もよいとされる食性は、自分の生まれた周辺のものを食べることです。これを「身土不二」といいます。自分の育ったところ、生きているところのものを食べなさいという教えです。人間が足で歩ける範囲である、三里四方、四里四方でとれたものを食べなさいという教えです。
暖かい地方では、バナナなど身体を冷やす食物ができ、寒い地方では根菜など身体をあたためる食物ができます。つまり、旬の野菜を食べるともいえます。
また、ナスは真夏にできる野菜です。全国各地で、さまざまな種類のナスができていますが、土地によって変化してしまうため、同じナスはできません。東京でできたナスを大阪へ持って行って栽培しても、同じものはできません。大きくならなかったり、逆にたいへん大きくなったりと、変化してしまいます。なぜかというと、夏の太陽の熱のあたり具合が土地によって異なるため、ナスは変わってしまうのです。自分が生活している土地の作物を食べなければいけないことの典型でしょう。
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| ■ ″旬″を食べよう
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日本には、春夏秋冬という四季があります。そして、それぞれの季節にできる、いわゆる旬の食材を食べることには意味があります。
春は、冬の冬眠からさめて、生命を育むものを食べます。たとえば、春の七草、タケノコ、新芽などです。
夏は、気候が暑いので、身体を冷やすものを食べます。キュウリ、トマト、ナス、ウリなどです。
秋は、冬に向けて、生命を養うものを食べます。米、粟、種などです。
冬は、寒いので、身体をあたためるものを食べます。根のもの、大根、ゴボウ、乾燥もの干物)などです。
ここで、注意したはうがいい例をあげておきましよう。
冬に、バナナを食べる、パイナップルを食べる、グレープフルーツを食べる。これはみなあたたかい地域でとれるもので、身体を冷やしてしまいますから、冬寒い地方の方は食べてはいけません。冬には、身体をあたためるものを食べ、逆に、夏は身体を冷やすものを食べましよぅ。
たとえば、夏にスイカを食べます。スイカの農地は、イランやイラクで、暑い砂漠地帯です。こうした地域では、身体から水分がとられてしまいます。作物も同じで、暑い地域でできる作物は、太陽の光にあたっても水分がとら
れて枯れないようになっているのです。そういう力は植物はもっています。
イランやイラクの人がスイカを食べるのはいいのですが、日本人がクーラーをかけた涼しい部屋で食べると水膨れになります。真夏に、海水浴にでかけて大汗をかきながらスイカを食べるのはいいのです。脱水症状を防ぐことになりますから。
また、カレーは身体を冷やす料理です。インドはあたたかい国であるため、インド料理としてよく食べられていますが、寒い国であるカナダで食べると病気になることもあるようです。私たち日本人も、冬にカレー食べることは避けたほうがいいでしょう。
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| ■ 食事と陰陽 |
ここで、東洋医学や東洋哲学でいわれる、「陰陽論」についてふれておきます。
陰陽論は、地球上のあらゆるものを、陰と陽の二つに分ける考え方です。
たとえば、男と女、昼と夜、夏と冬、動物と植物といった具合です。この組み合わせでは、前者が陽、後者が陰にな
ります。陽は活発で、陰は静かといえますが、陰と陽はそれぞれ独立した存在ではなく、お互いに補ったり、抑制したりしてバランスをとっています。
この陰陽論の考え方は、食べ物にもあてはまります。たとえば、夏になると店頭にスイカが並びます。スイカは身体を冷やす果物ですから、身体をあたためる塩をかけて食べると、バランスがとれます。
また、昔から「秋ナスは嫁に食わすな」といいます。なぜかというと、ナスは身体を冷やすからです。秋口にナスを食べるときは、味噌を塗って料理しましょう。味噌は身体をあたためる作用があり、ナスの身体を冷やす作用を中和することができます。このようなことを考えずに、ナスを油で炒めて食べている人がいます。
油で炒めると身体を冷やしてしまいます。そういうものを食べている人に限って、「私、冷え性なんです。なんとかなりませんか?」とおっしやいます。これでは冷え性が治るわけがありません。食生活が間違っているのですから。
食材の陰陽を判断する基準についてまとめておきます(漢方論より)。
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@.味
陽・・・・・苦味・渋味・塩味
陰陽調和(中庸)・・・・・穀物の旨味・まろやかな
自然の甘味
陰・・・・・酸味・ピリッと辛味・えぐみ
A.形状
・根は幹や葉より陽。葉莱類より根菜類のほうが陽。
・地中に深くもぐる根は陽が強い。
・根が斜めや横にはる、さつまいもやじゃがいもは陰が強く、また、だいこんやかぶのように地下に向くべき根が
地表に抜け出してくるものは、同じ根菜類の中では陰が強い。
・ 葉や幹、枝、実の形
陽・・かたく、小さく、切れ込みがあったり、とげがある。
陰・・太陽に向いて、土の上に伸びて成長する。やわらかく、大きく、広がって、長いものや水っぽいもの。
B.成長環境により判断
・寒冷地に育つものは陽が多い。
・熱帯地に育つものは陰が多い。
C.季節による判断
・冬に育つものは陽が強い。
・夏に育つものは陰が強い。
・春や秋の中庸の季節に育つものは、比較的中庸に近い。
D.色による判断
陽← 中庸 →陰
黒赤橙褐色茶 黄白 線青藍紫
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| ■ 陰陽調和料理
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陰陽と食事・料理について研究されている方に、梅崎和子さんがいらっしやいます。陰陽調和料理法を研究され、多くの本を書かれています。たいへん教えていただくことが多いので、紹介させていただきます。
陰陽調和料理とは、陰陽のバランスをとった調理法です。バランスがとれていると、健康な状態であるということがいえます。前述の、スイカに塩をかける、ナスに味噌を塗るというのも陰陽のバランスをとっているわけです。
梅崎和子さんが提唱する、陰陽のバランスをとった調理法に、「陰陽重ね煮」があります。
一つの鍋にさまざまな食材を入れて煮込むだけという、いわゆる「ごった煮」ともいえる簡単な調理法ですが、一つだけポイントがあります。それは、鍋の一番下から、陰から陽の順番に食材を置いていくのです。
「春の食品の重ね方」を例に図解しておきましよう(梅崎和子『陰陽調和料理で健康』農山漁村文化協会)。
陰陽重ね煮の効果について、梅崎さんは、「炎の上に置かれた鍋の中で、自然界とは逆さに並べられ、重ねられた野菜が火のエネルギーを受けて、本来の姿を形づくろうとします。
つまり、鍋に重ねた上の根菜は下に下がろうとし、下の葉莱は上に上がろうとして、互いに個性をぶつけあいながら持ち味を調和しあい、なんとも丸みのあるうまみ、素材そのものが持っているおいしさが引き出せるのです。」
(前掲書)とおっしゃっています。
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【食力と食性のまとめ】
食 力 食事のもつ力 → 食力のある食品の例:玄米
食品のもつ力 → 食力のない食品の例:白米
食 性 食事のもつ性格 → 陰陽調和のとれた調理法
食品のもつ性格 → 陰性‥・冷やす、陽性・・・あたためる
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