伝統食研究会健康セミナー

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第 一 話 Part.1
●●● 日本人を健康にする食事 ●●●
Part.1 日本人を取り巻く環境
■ ヒトの祖先 ■ 日本には、四季がある。
■ 身体が覚える ■ 日本の自然環境から食生活を考える
■ なぜ生活習慣病は、なくならない。 ■ 「いただきます」の意味
■ 昭和17年までの食生活 ■ 動物的な特徴・・・歯の数から食べ物を探る
■ 日本人とは、こういう民族なのか ■ 動物的な特徴・・・腸の長さから食べ物を探る

■ ヒトの祖先
私たち一人ひとりには命があります。この命は誰からもらったのでしょうか? もちろん、両親からですね。両親はその両親から命をもらいました。それをまとめて「ご先祖さま」といっています。ご先祖さまのおかげで、いま私たちは生きているのです。

それでは、もっとさかのぼって、人間のご先祖さまは何でしょうか? もちろんサルですね。サルのご先祖さまは魚になります。そして魚のご先祖さまは、アメーバなどの単細胞生物です。こうしてたどっていくと、すべてのご先祖さまは、実は海水になるのです。太古の昔、海の中から小さな命が生まれたのです。

私たちに両親がいるように、海水にも両親がいます。それは、天と地です。天というのは空気のことです。一方、地は大地ですね。つまり、天(気体)と地(固体)から海(液体)ができて、そのなかに一つの生命体が生まれたのです。それが魚の形になり、進化してサルになり、人間になったわけです。

天と地ができてからヒトが誕生するまでに46億年かかったといいます。また単細胞からヒトになるまでに35億年かかっています。人間の赤ちゃんは、お母さんのお腹のなかに十月十日いることで、一個の細胞から人間になって生まれてきます。地球上の生物が35億年もかかってきた進化の過程を、十月十日に短縮して生まれてくるのです。

一個の細胞からみなさんの身体が生まれたということが、健康になることを考えるうえで一番大切なことです。お母さんのお腹の中にいる十月十日の間に、自然のなかでどのようにすれば生きられるか、どうしたら健康に生きられるか、ということを教えられるのです。それを学習して、赤ちゃんは生まれてきます。
■ 身体が覚える
私たちは、ご飯を食べることを、生まれてから、親に教わり、頭で覚えてきたわけではありません。また、テレビ番組を見て、「○○は健康にいい」といったことを頭で覚えますが、身体は頭で生きているわけではありません。ヒトの身体の60兆個の細胞一つひとつが健康に生きているかどうかということが、私たちが健康であるかどうかということなのです。このことを勘違いしていませんか?

お母さんのお腹の中にいる十月十日の間に、空気を吸ってご飯を食べて生きていくという、自然界の摂理・営みを、DNAが覚えるのです。したがって、教えられたことと違うことをすると病気になるわけです。つまり、自然界から離れたことをすると病気になるのです。この一番大事なことを、現代人は忘れてしまっているのです。

テレビの健康番組で「○○という物質が身体にいい」というとすぐに試してみます。こうした情報はちまたにあふれていますから、たくさんのことを知ることになります。私はこれを「知った病」であると言っています。「やまいだれ」に「知」を書くと、「痴」という字になります。これを大阪では 「ボケ」といいますが、こうなったらいけません。「命は自然からしか授からない」ということをしっかり認識しなければいけないのです。

このことを教えてくれたのはお釈迦様です。お釈迦様は「自然智 (じねんち)」という言葉で表現しました。自然から物を知りなさい、自然から知恵を授かりなさい、ということをお釈迦様は言いました。この教えは、仏教とともに日本に伝わり、日本人の間でも先祖代々受け継がれてきたのです。

たとえば、冬の寒さが厳しいときに、大根の炊き出しをします。大根の炊き出しは身体をあたためる効果があるのです。このような例はたくさんあります。こうした自然からの知恵が忘れられていませんか?おばあちゃんが教えてくれたことを、古くさいなあなんて言ってませんか。知慮に従わないことが積み重なると、二人に一人がガンになってしまうような現実があるのです。自然を忘れると命はなくなるのです。

先ほど申し上げたとおり、人間の身体は単細胞が集まってできています。その数は約60兆個といわれています。これが私たちの身体です。決して自分の身体だと思ってはいけません。アメーバみたいなものの集まりだと思わなくてはいけないのです。つまり、私たち人間が健康であるためには、60兆個のアメーバを一つずつ健康にしてあげることを考えなければいけません。

命のご先祖さまである天と地は、天は空気、地は大地からとれる食物と言いかえることができます。空気と食事を得て私たちは生きています。お釈迦様は「天地人合一と言っています。自然も人もみな一緒、という意味です。さらに、天地人合一が乱れると病気になるとも言っています。みんなそれを忘れてしまっています。このような知恵は、日本人の生活に根づいていたのです。

天と地のうち、天つまり空気については、自分ではどうすることもできません。西丸震哉先生が 『41歳寿命説』(情報センター出版局)のなかで「薄いガス室」と指摘しています。しかし、地、食べ物については日頃から自分たちで気をつけていくことはできます。
■ なぜ生活習慣病はなくならない
先日の新聞にもこんな記事がありました。「糖尿病が疑われる人は可能性が否定できない″予備軍”を含め成人の6.3人に一人に達することが6日、厚生労働省の「糖尿病実態調査」(速報)で分かった」 (日本経済新聞・2003年8月7日)。

以前は成人病といっていましたが、ガンなどの生活習慣病は減るどころか増える一方ですね。生活習慣病の原因としては、「食事」「運動」「喫煙」「飲酒」が指摘されています。原因がある程度わかっているのに、現在までどうして減らないのでしょうか。

私はこんなふうに考えています。まず、第一世代が悪い生活習慣を送ったとします。悪い生活習慣とは、悪い食習慣、多量の喫煙・飲酒といったことです。その習慣から病気になる、またはその予備軍になります。第一世代の子である第二世代は、第一世代の生活習慣で子どものころから育ちます。当然、第二世代も物心がつく前からこうした生活をしていれば、大人になって”これは間違った習慣だ”とは思わないでしょう。

このように考えると、第二世代は第一世代よりも、病気になる可能性が高くなります。そして、第一世代の孫にあたる第三世代になると、前の二世代の習慣が遺伝子として受け継がれる確率が高くなるのではないでしょうか。第三世代では生まれたときすでに、身体のなかに生活習慣病になる要素があるのではないでしょうか。
■ 昭和17年までの食生活
西丸先生は『41歳寿命説』のなかで「昭和34年」を一つのターニングポイントとして考えていらっしゃいます。私は、「昭和17年」を、「食生活の変化の年」として考えています。

昭和17年(1942年)までは、日本では生活習慣病がほとんどみられなかったからです。あとで詳しくお話しますが、このころまでは「日本の伝統食」がしっかりと根づいた食生活を送っていました。ご飯に味噌汁、梅干し、漬け物といった食事です。私はこの食事こそが生活習慣病を防ぐと同時に、日本人がもっとも日本人らしく生きていけるのではないかと考えています。
■ 日本人とはどういう民族なのか
具体的な食事の話に進む前に、日本人の特徴をいくつか考えてみたいと思います。 まず、日本人とはどういう民族なのでしょうか?

私たちの身体は一代でできたものではなく、長い年月をかけてできあがってきたものです。だからこそ、食習慣に影響を与えている要素をすべて考えていこうというのです。

ヒトがこの地球上に現れたのは440万年前です。また、もとは一つであったアジア大陸が分離して、日本列島がいまのような形になったのです。したがって、日本人はアジア大陸の民族と密接に関係しています。

最近は、DNAの研究が進み、いろいろなことがわかるようになりました。宝来聴著『DNA人類進化学』(岩波科学ライブラリー52)によると、日本人の起源は次のように考えられます。

アフリカ人、ヨーロッパ人、アメリカ先住民、アイヌ、中国人、硫球人、韓国人、本土日本人の八集団について、総当たりで遺伝距離を調べました。すると、アフリカ人は他のどの集団と比較しても大きな遺伝距離をもっているのですが、東アジアの五集団はそれぞれの集団間の遺伝距離が非常に小さいことがわかりました。

結果を系統樹にまとめると下記の図のとおりになります。アフリカ人とはもっとも遠く、ヨーロッパ人・アメリカ先住民とも比較的遠いことがわかります。それに対して、東アジアの五集団は近い関係にあることがわかります。

このように、日本人の祖先は中国人・韓国人と密接な関係にあることがわかります。しかし、日本には中華料理もキムチも、日常の食事としては定着しませんでした。それぞれの民族の血をひきながらも、日本人独自のものができあがってきたと考えられます。それには、日本列島を取り巻く環境が大きな役割を果たしたのではないでしょうか。そこから日本人の食習慣ができあがり、日本人独特の体質ができあがっているのだと考えられます。

 現代人8集団の系統関係                     日本の位置
現代人8集団の系統関係 日本の位置
■ 日本には四季がある
次は日本の地理です。  日本列島は東アジアの一番東に位置しています。東には太平洋があり、湿気を多く運んできます。西には日本海、そしてアジア大陸が広がっています。大陸にはヒマラヤ山脈の北側にタクラマカン砂漠があり、春と秋に乾燥した空気を運んできます。また、北にはシベリアの大地が広がり冷たい空気を送り込んでくる一方、南からは熱い空気が吹き込んできます。季節風と気圧によってさまざまな気候がつくられるのです。
これが四季です。(上記の地図)

日本列島のほとんどは、温帯地方にあるため、年平均気温は10〜18度、年降水量は1000〜2500ミリメートルで、四季の変化が豊かな点が特徴です。アジア大陸の東岸に位置しているので、一般に冬は寒冷少雨、夏は高温多湿の気候になっています。ちなみに、イギリスや北アメリカの太平洋岸は、冬は温暖多湿、夏は冷涼乾燥です。

また、東アジアの季節風帯にあるため、季節風気候の特徴をもっています。それは、冬は北西季節風が卓越するので日本海側では湿潤多雨(雪)、太平洋側では乾燥少雨という気候を、また夏は南東季節風の卓越によって高温多湿の気候をつくりだします。南東季節風の吹きはじめと後退する時期には、梅雨と秋雨という二つの雨期があります。

日本は南方海上から台風が来襲するコースにあたっており、暴風雨、洪水、高潮などが起こりやすい気候帯にあります。日本付近では、しばしば低気圧や前線の活動が活発となり、複雑な地形と相まって豪雨、豪雪、干害、冷害などの災害が起こりやすい気候帯にあります。

 四季がこれほどはっきりしているのは日本だけです。当然、そこでできる作物も季節ごとに変化してきます。これが”旬”ということになります。
■ 日本の自然環境から食文化を考える
日本列島の75%は山地であり、平野は25%ほどです。したがって、水の流れが速く、山地で降った雨は短時間で海に流れます。自然の栄養分も海に流れ込んでしまいます。

 また、日本の普通の河川水、水道水の硬度は2〜3度程度です。工業上は、硬度20度以上の水を硬水、10〜20度のものを通常硬水、10度以下のものを軟水として区別します。つまり、日本の水は軟水にあたります。硬水は、カルシウム・ナトリウム・カリウムなどさまざまなミネラル成分(鉱物質) が多く含まれており、工業用水、生活用水として不適当とされます。

 日本列島の特徴として、火山が多いこともあげられます。火山灰の多い土壌であり、土壌中のアルカリ成分が雨水によって流されてしまうため、日本の土壌は酸性土壌の特徴をもっています。酸性土壌は、作物の生育を著しく害することがあります。

こうした特徴をもった日本列島の自然環境のなかでは、あまりいい作物はできませんでした。繊維質がたいへん多く、栄養価の乏しい食品となってしまいます。これを補っていく身体づくりを、私たちの祖先は考えてきたのです。とはいっても、頭で考えてきたわけではありません。経験から知っていたのです。

 たとえば、モンゴルでは野菜がとれません。それをカバーするために、乳製品から栄養をとっていました。アラスカも野菜が育たないので、エスキモーはアザラシの肉から栄養をとってきました。一方、イタリアは地中海を前にして、豊かな農地が広がっています。そこでは、非常に豊富な作物をもとに、食習慣が発達しました。中国も栄養分のたまった土壌があるからこそ、食文化が発達したのです。

 軟水文化の日本では、調味料はあまり使わず、素材を活かす食べ方をしてきました。生きているものを思いっきり食べてきたのです。凝った料理はしませんでした。このあたりが、中国や韓国との食文化の違いといえるでしょう。その土地その土地で食文化にも違いがあり、人間の身体もそれにあったようにできているのです。
■ 「いただきます」の意味
日本のお隣、中国には広大な平野があり、作物がたくさんとれました。そのために、食事を残さなくてはいけないという習慣ができました。出されたものを全部食べてしまうと、「たくさんあるのに私にはこれだけしか出さないのか」という意味になり、相手に対して失礼になるからです。そのため多く食しても腸内で発酵したり毒が生まれない身体ができあがっています。

 ところが、日本は作物があまりとれず、食べ物はたいへん貴重でした。そのため、「大切な食べ物を私にくださいました」ということで、出されたものは残さず全部食べないと失礼になるのです。

 そして、日本人の食事には、力もあり、命を大切にする食生活でしたから、食べ物の命を自分の命に変えるという意味があったのです。食事をする前に「いただきます」と言います。これは単なる礼儀作法ではなく、「食べ物の命をいただく」という意味が込められているのです。食べ物から命をいただいて、自分の命にしますという意味なのです。
■ 動物的な特徴…歯の数から食ペ物を採る
ところで、人間は動物でしょうか、それとも植物でしょうか。もちろん動物ですよね。動物とは″動く物″と書きます。

 あなたはテレビのリモコンを使いますか?それはなぜ? チャンネルを手元で変えています。動いていないですね。動かないと病気になりますよ。「運動不足で…・・・」という人がいらっしやいます。家のなかでもこまめに動き、近所に出かけるときはクルマを使わなければいいのです。自然から離れた不自然な生活である」と気づくべきです。

ヒトの歯
 食事についてもこのようなことをしていませんか。動物はみな、口から食物を取り入れて、栄養にしています。人間の場合、赤ん坊のときは母乳を飲み、大きくなれば自分の歯で物を噛んで食べています。

ヒトの歯は、永久歯で32本あります。そのうちわけは、多い順に、臼歯が20本、門歯が八本、犬歯が4本です。比率としては5対2対1となります。ただ、最近では臼歯のうち、親不知四本が生えない人も増えているので、4対2対1になる場合もあるようです。

 さて、臼歯は、「臼(うす)の歯」と書くとおり、食物をすりつぶす働きがあります。穀物や木の実、豆類などをすりつぶして食べるときに使います。門歯は前歯の8本で、野菜や海草、いも類を食べるときに使う歯です。犬歯は俗に糸切り歯ともいいますが、肉食動物では牙にあたりますが、ヒトの場合はそれほどとがっていません。
■ 動物的な特徴・・腸の長さから食べ物を探る
ヒトの歯の特徴はわかりましたね。食べ物が入る部分の次に、消化・吸収する部分について考えてみましょう。もちろん腸ですね。腸にも特徴があります。

 動物の腸の長さを体長と比較してみると、肉食動物ではその比が小さく、草食動物では大きくなります。たとえば、肉食性のライオンでは約4倍であるのに対して、草食性のヒツジでは約25倍となっています。

 ヒトは、肉食動物と草食動物のほぼ中間です。ただ、これは民族によってだいぶ違いがあります。日本人の腸が約7〜8メートルあるのに対して、欧米人の腸は約4〜5メートルと短くなつています。また、中国人の腸の長さは、日本人の腸より1メートル短いといいます。

 この違いがどこからくるかわかりますか?もちろん、肉食か草食かの違いですね。欧米人は肉食をしてきたために、腸の長さが短くなったのです。一方、日本人はあまり肉を食べてきませんでした。穀物や野菜を多く食べてきたので、腸が長くなったのです。ヒトの身体、日本人の身体にはこのような特徴があるのです。

 また、腸の長さの違いは、食べてきた量にも関係してきます。前にお話したように、中国は食べ物が豊富であったのに対して、日本では食べ物が貴重でした。中国人はたくさん食べることができるので、短い腸でも栄養を吸収できました。ところが、日本人は少ない食べ物から栄養を取り込まなくてはならないため、唾液や胃酸の助けを借りながら、腸の中で長い時間かけて吸収を行ったのです。吸収率を上げる必要があったのです。日本人は、十食べたら、十栄養として吸収していたのです。

 腸の長さには、もう一つの重要な問題が隠れています。腸の長さが短い場合、腸に入った食べ物は早い時間で外へ排出されますね。ところが、日本人のように腸が長いと、食べ物は長い時間、腸の中にあることになります。つまり、腸が長いと、腸の中で食べたものが腐ってしまうことが考えられます。このことはとても大事なので覚えておいてください。

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